審判所、契約資料ない口銭の対価性否定
寄附金課税+重加算税の課税処分を支持
・ 国税不服審判所が契約書等のない口銭の対価性を否定し、寄附金課税、重加算の課税処分支持の裁決。
・ 出資関係等ない会社に実際支払った金銭の損金算入否認は、実質課税の原則との兼ね合いからも注目
(本誌416号8頁に関連記事)。
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商社である審査請求人は、従来から顧客候補の紹介や技術的アドバイス、取引関連情報の提供などを受けてきたA社に対し、過去の協力業務の対価も加味して口銭(取引の仲介料や手数料等)を支払った。一方、税務署は、請求人が口銭として支払った金銭の対価性を否定、寄附金課税および重加算税の課税処分を課した。
本件では口銭の支払い方も問題となっている。請求人は、口銭を支払うため、架空の注文書、納品書、請求書を口銭の支払先に送付したうえで、当該支払先に対する「売上」と当該売上を上回る「売上原価」を仮装計上、その差額を支払先に振り込んでいる。口銭を口銭として支払わなかった背景には、A社が口銭の類の金銭を受け取れない事情もあるようだが、この点について請求人は、「口銭の支払いに対する債権・債務の発生を明確にするため、帳簿上の一対の売買取引とした」と説明している。
また、口銭の対価性について請求人は、「口銭は商社相互間の包括的な事業協力の対価、個別の情報や役務の提供の対価、事業協力に対する利益の分配の性質を有する金銭など、慣習又は契約に基づき支払われる手数料等と同一のもの」としたほか、請求人とA社の間には出資関係、役員等の人的な派遣交流関係はないことから、「金銭を贈与する理由はない」と主張している。
これに対し国税不服審判所は、たとえ支払先が請求人に対して何らかの貢献をしていたとしても、「役務提供の具体的内容や対価の算定方法等について当事者間の合意の成立を裏付ける契約等の資料がない」ことや、任意の時期に任意の金額が支払われていることなどから口銭の対価性を否定、「請求人から支払い先に対する金銭の贈与と判断するほかない」とし、税務署が行った寄附金課税を全面的に支持している。
また、国税不服審判所は、請求人の行った取引の仮装による金銭の損金算入は国税通則法68条1項に規定する仮装隠ぺいに該当するとし、法人税重加算税の賦課決定処分も支持している。
本件は、実際に支払いがあった金銭について、契約書がないことや、役務提供の内容が具体的でないことをもってその対価性が否定されており、実質課税の原則との兼ね合いの点でも注目される裁決といえるだろう。
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T&Amaster
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(週刊「T&A master」420号(2011.9.26「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2011.11.16 ビジネスメールUP!
1613号より
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