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最高裁が初めての判断
土地等の譲渡損の損益通算廃止は憲法84条に違反せず

 最高裁判所第一小法廷(金築誠志裁判長)は9月22日、長期譲渡所得に係る損益通算を認めないこととした税制改正が施行日よりも前に適用された事案に対して、原審の東京高裁の判決を支持。憲法84条に違反しないとの初めての判断を行い、納税者の主張を斥けた(平成21(行ツ)73)。
 土地・建物等の譲渡損失の損益通算の廃止については、与党の平成16年度税制改正大綱で突如として明記された改正項目。平成16年3月末日前の平成16年中の譲渡に対しても適用されることになったため、当時から税理士や公認会計士などの実務家から不利益遡及ではないかとの批判の声が挙がっていたものだが、今回の最高裁の判断は一般の納税者にとって厳しいものとなった。なお、同種の事件も提起されており、最初の福岡地裁のみ、憲法84条に違反するとの判断を行っていた。

施行日前の土地等の譲渡に損益通算を認めない点が問題
 平成16年度税制改正(平成16年法律第14号)により、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額については、他の各種所得の金額から控除する損益通算が認められないこととなり、平成16年1月1日以後に行う土地等または建物等の譲渡について適用されることになった(改正附則27条1項)。
 特に問題となったのは、平成16年度税制改正法の施行日が平成16年4月1日にもかかわらず、施行日よりも前にされた平成16年中の土地等の譲渡についても損益通算を認めないこととした点だ。加えて、与党の平成16年度税制改正大綱が公表された平成15年12月17日から年末までの日数が限られた点も問題を大きくしたといえる。
福岡地裁のみ納税者勝訴
 今回の事案についてみれば、納税者は、本件改正附則は不利益な遡及立法であり、憲法84条に違反するなどと主張。所轄税務署長が損益通算を認めず、所得税に係る更正の請求に対し更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたのは違法であるとして、その取消しを求めたものである。
 同種の事件として、地裁レベルでは、今回の千葉地裁の事案のほか、福岡地裁、東京地裁のものがあり、福岡地裁では遡及適用がされる時点において、国民に対し改正が周知されているといえる状況ではなかったなどとして、「憲法84条に違反する」とする納税者勝訴の判決が下されていた。 ただ、その後の福岡高裁では納税者側の逆転敗訴となっており、高裁レベルでは、合憲とする判断がそれぞれなされていた(参照)。

駆け込み売却で立法目的を阻害するおそれ
 最高裁は、暦年当初から損益通算廃止の適用を定めた改正附則が憲法84条の趣旨に反するか否かについては、諸事情を総合的に勘案したうえで、暦年途中の租税法規の変更およびその暦年当初からの適用による課税関係における法的安定への影響が納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかという観点から判断するのが相当であるとした。
 そのうえで、@損益通算の廃止は、長期譲渡所得に係る所得税の税率の引下げ等とともに、資産デフレの進行に歯止めをかけることを立法目的として立案され、一体として早急に実施することが予定されたものである、A適用の始期を遅らせた場合、損益通算による節税目的の土地等の駆け込み売却が行われ、立法目的を阻害するおそれがあった、B暦年の初日から改正法の施行日の前日までの期間(平成16年1月1日〜3月31日)を適用対象に含めることにより暦年の全体を通じた公平が図られ、その期間も3か月に限られているなどといった点を総合的に勘案すると、改正附則が平成16年1月1日以後にされた長期譲渡に適用することとしたことは納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として容認されるべきものと解するのが相当と判断。改正附則が憲法84条の趣旨に反するものということはできないとした。

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  キーワード 「損益通算 廃止」⇒188

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週刊「T&A master」421号(2011.10.3「SCOPE」より転載)

(分類:税務 2011.11.30 ビジネスメールUP! 1618号より )

 

 
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