なぜ、会計士は粉飾決算を見抜けなかったのか? 〜オリンパス問題
社会一般と会計士との認識に大きな溝
オリンパスの粉飾決算問題が会社法や金融商品取引法の改正、あるいは監査制度の見直しに大きな波紋を投げかけている。
上場会社の粉飾決算が発覚した際に問題となるのは、公認会計士や監査法人がなぜ、粉飾決算を見抜けなかったのかという点である。一般の人にとって監査とは、「粉飾決算を含めた企業の不正を発見すること」との認識があるからだ。
しかし、現在のオリンパスの監査人である新日本監査法人、あるいは平成21年3月期まで同社の監査を担当していたあずさ監査法人の監査報告書をみても、いずれも問題ないことを意味する「適正意見」が付されている。公認会計士にとって監査とは、企業(経営者)の作成した財務諸表が会計基準に準拠した正しいものであるかという観点から行うもの。不正の摘発は監査の目的とされていないのだ。
ここに監査に対する社会一般と監査人の間にギャップが生じていることになる。いわゆる“期待ギャップ”と呼ばれるものである。
監査制度に問題はないのか?
オリンパスの問題に関しては、現在、第三者委員会において原因を究明中であり、証券取引等監視委員会などの行政庁側も調査に乗り出している。詳細はこれらの調査結果を待たなければならないが、不正を行った会社の問題だけに済ますことができるのだろうか。監査制度に問題はないのかという点にも疑問が残る。
社会一般において監査に対する期待ギャップが存在する以上、これをできるだけ解消すべきであろう。
交代理由の開示は実効性があるか?
内閣府令の改正により、平成20年4月から企業の監査人が交代したケースでは、交代した理由や公認会計士等の意見を臨時報告書で開示することとなっている。オピニオン・ショッピング(企業側に都合のよい意見を出してもらうために監査人を交代すること)が疑われるような事例が散見されたからだ。
今回のオリンパスの監査人交代でいえば、臨時報告書は提出されているものの、理由は任期満了に伴う交代であり、退任する監査人(あずさ監査法人)から特段の意見は出ていない。何かしらの開示がされていれば不正発見の端緒になったのではないかとの見方もある。開示制度として導入はされたが、果たして実効性があるのかどうか検証が必要であろう。
リーマン・ショックを踏まえ、欧州や米国では、再び監査事務所自体のローテーションの導入が検討されており、今年一番の話題となっているようだ。監査事務所のローテーション導入は監査法人のみならず、企業からも反対が強く、これまでは実現性に乏しいものとされてきた。
ただ、今回のオリンパスの問題をみると、わが国でも対岸の火事とはいえなくなってきたといえる。
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(週刊「T&A master」427号(2011.11.21「コラム」より転載)
(分類:会社法 2012.1.27 ビジネスメールUP!
1638号より
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