ASBJ、包括利益の表示等の取扱い審議を再開
開発費、連結財務諸表も現行通り費用計上へ
企業会計基準委員会(ASBJ)は1月10日、現在、審議をストップしていた無形資産会計、企業結合会計、退職給付会計、包括利益の表示に関する会計基準の単体財務諸表の取扱いについての検討を開始。開発費に関しては、連結財務諸表も現行と同じく費用処理する方向で検討するとしている。IASB(国際会計基準審議会)の「アジェンダ協議2011」への意見を踏まえての対応だ(本誌429号40頁参照)。
アジェンダ協議へのコメントでは開発費の資産計上などに異論
企業会計基準委員会では、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から、無形資産会計(開発費の資産計上など)、企業結合会計(のれんの非償却など)、退職給付会計(退職給付の負債の貸借対照表への即時認識など)、包括利益の表示に関する会計基準の単体財務諸表の取扱いについて検討を行っている。
しかし、平成23年6月30日の「開発費やのれんなど、現在、企業会計基準委員会で検討している会計基準も企業会計審議会で方向性を議論すべきである」との自見金融担当大臣の発言を受け、同委員会では、これらの会計基準の審議をストップしていた。
今回、日本の主張を取り入れるべきとした「アジェンダ協議2011」(IASBの今後の3年程度の活動計画)へ提出したコメントなどを踏まえ、審議を再開することとしたものだ。再開するに当たって、企業会計基準委員会の事務局では、4つの今後の方向性を明らかにしている(表参照)。

開発費の資産計上、改正への理解が得られず
無形資産会計における開発費の資産計上に関しては、現状では、連結、単体ともに会計基準を改正することのコンセンサスが得られていないと判断。また、「アジェンダ協議2011」に対して、IFRSにおける開発費の資産計上の適用後レビューの必要性の提案を行っているため、当面は、現行の費用処理を維持することとしている。
なお、無形資産の定義、認識要件、耐用年数が確定できない無形資産、繰延資産などの他の論点については、無形資産会計の基準化を図るか否か、別途検討するとしている。
のれんも償却処理を維持へ
企業結合会計におけるのれんの非償却についても、現状では、連結、単体ともに会計基準を改正することのコンセンサスを得られていないなどと判断。当面は、現行の償却処理を維持することとしている。
なお、少数株主持分の会計処理および少数株主損益の表示、企業結合に関する取得原価の算定(条件付取得対価、取得に要した支出の費用処理等)、取得原価の配分(暫定的な会計処理、偶発負債、企業結合に係る特定勘定等)、子会社に対する支配を喪失した場合の処理については、改正を行うか否か別途検討するとしている。
退職給付の見直しは連単分離へ
未認識項目の負債計上に係る連結財務諸表の取扱いについては、強い異論がないことからコンバージェンスを行う方向で改正する見通しとなっている。
一方、単体財務諸表の取扱いについては、分配可能額や年金法制等と関係などから改正しない方向となっている。したがって、連単分離ということになりそうだ。
ただし、給付算定式基準の選択適用など、比較的反対が少ない改正項目については、単体財務諸表でも適用する方向で改正する。
包括利益の表示、単体は不適用で決定へ
包括利益の表示に関する会計基準(平成22年6月30日公表)については、平成23年3月期からすでに適用されている。しかし、これは連結財務諸表のみであり、単体財務諸表への適用については、会計基準公表から1年後を目途に判断することとされていた。
包括利益の表示についても、単体財務諸表への適用については、反対意見が多いことから、当面は、現行と同じく、連結財務諸表の適用のみにとどめることとなる方向だ。
開発費に関しては、資産計上することになれば、即時費用処理する場合に比べ、損金処理の後年化や、研究開発税制の対象から外れる可能性があるなど、税務上に与える影響が大きいことが懸念されていた。今回、連結および単体の両方で現行の費用処理を継続する方針が示されたことで、企業関係者の懸念が払拭されることになる。 |
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster
読者限定サイト 検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「開発費 連結財務諸表」⇒56件
(週刊「T&A master」434号(2012.1.16「SCOPE」より転載)
(分類:会計 2012.3.14 ビジネスメールUP!
1658号より
)
|