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「資産調整勘定」の否認リスクは?
適格要件外しによる意図的な創出や、金額の妥当性が問われる可能性も

・ 非適格再編では、交付金額と移転資産・負債の時価純資産価額の差額が資産調整勘定として計上。
・ 資産調整勘定の償却費計上が、課税当局に租税回避と認定されるリスクは否定できず。
・ 意図的な非適格再編による資産調整勘定の“創出”や、資産調整勘定の金額が問題視される可能性も。

 資産調整勘定とは、企業結合会計基準におけるパーチェス法による会計処理の強制や、会社計算規則でのれんの計上が認められたことを受け、平成18年度税制改正で創設された概念だ。すなわち、税制非適格再編において、被合併法人等から資産または負債の移転を受けた内国法人が交付した対価額が、移転を受けた資産および負債の時価純資産価額を超える場合、その超える部分の金額が「資産調整勘定」として計上されることになる(法法62条の8)。一方、税制適格再編では資産は簿価で引き継がれることから、資産調整勘定は発生しない。
 資産調整勘定は5年間(60カ月)で償却され、課税所得を減少させる。合併等に伴う交付金額と時価純資産価額の差が大きければ大きいほど、償却費も大きく計上されることになる。
 そして、この資産調整勘定の計上は、課税当局から「租税回避行為」と認定されるリスクが否定できないと考えるべきだろう。
 たとえば、本来は税制適格再編となり得るところ、意図的に税制適格要件を外すことであえて税制非適格再編とし、資産調整勘定を“創出”するような場合だ。こうしたケースに対する否認では、資産調整勘定そのものが否認されるのではなく、税制適格要件を充足していない(税制非適格再編)との処理が否認された結果、税制非適格再編⇒税制適格再編となり、資産調整勘定も消滅する形となる。税制適格要件に照らせば「税制非適格再編」に該当するものを税制適格再編に引き直すことになるため、行為計算否認規定(法法132条の2)が適用されることになる。
 また、税制非適格再編であることは問題視されず、資産調整勘定の金額の適正性、すなわち資産調整勘定の過大な計上が問われることも考えられよう。
 このところ組織再編や資本等取引関係の否認事例、税務訴訟が相次いでいるのは本誌既報のとおりだが(本誌415号8頁、416号4頁参照)、資産調整勘定は平成18年度税制改正で創設された比較的新しい規定であるだけに、これから課税上の問題が本格化してくる可能性がある。企業にあっては要注意だろう。

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  キーワード 「資産調整勘定」⇒13

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登録日

プレミアム税務

“適格外し”を巡る否認事例が訴訟に

2012年 04月 02日

解説記事

“源流”から辿るグループ税制 第5回 平成18年度改正 2010年 12月 27日

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資本に関係する取引税制とグループ法人税制、国際税制改正の解説と検討

2010年 01月 18日

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法人税制の課題─見直すべき項目と改正の方向性─

2009年 11月 02日

解説記事

「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」について 2009年 08月 10日
     
(以上、最新順)  

 

週刊「T&A master」437号(2012.2.6「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2012.4.9 ビジネスメールUP! 1669号より )

 

 
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