廃材売却収入除外で1部上場企業に追徴
過少申告加算税、重加算税回避には「社内調査」を
・ 東証1部上場企業、昨年の税務調査により工場廃材の売却収入の除外把握で3,500万円の追徴課税。
・ 国税通則法上、税務調査で指摘を受ける前に自発的に修正申告なら、過少申告加算税、重加算税はなし。
・ 廃材売却・リベート収入除外、5,000円基準不正適用等重課対象の不正懸念なら社内調査やルール作成を。 |
本誌443号(7ページ)では、工場における廃材の売却収入の除外などが課税当局に注視されている旨お伝えしたが、昨年7〜11月に行われた税務調査で同様の非違が把握され、3,500万円の追徴課税を受ける事例が発生していたことが判明した。
今回非違が把握されたのは東証1部上場のメーカーで、同社の一部の工事現場では、残材・廃材をリサイクル業者に売却して得た収入を会社に入金せず、現場が経費として使用していたという。売上除外が把握されたのは2006年度〜2008年度の3期分で、同社は課税当局の指摘を受けて修正申告を行い、これを2011年度第3四半期決算にも反映している。売上除外ということで、重加算税の対象になった可能性が高い。
本事案は、コンプライアンス体制が整っていると思われる東証1部上場企業のケースであり、実際、同社は2009年に残材・廃材の取扱いに関するルールを作成し、社員に周知徹底させていた。今回非違が把握されたのはこのルールを作成する前の事業年度のものということになる。このことが示しているのは、一般的に上場企業に比べコンプライアンス体制が甘いとされる中小企業ではこうした不正が十分に起こり得ることと、ルールを作成することで、一定の効果が得られるということだ。
本事案では、税務調査で指摘を受けてから弁護士を含む内部調査委員会を設置して社内調査を行い、指摘どおりの不正が把握されたため、修正申告を行ったとのことだが、国税通則法では、たとえ確定申告後であっても、税務調査で指摘を受ける前に自発的に修正申告をすれば、過少申告加算税、重加算税の課税は回避できることとされていることから(国税通則法65条D、68条@カッコ書き)、本事案でも、税務調査前に社内調査を実施していれば、過少申告加算税、重加算税は回避できたはずだ。
この点を踏まえると、本事案のような廃材の売却収入の除外のほか、同様に課税当局が重加算税の対象として注視する「人数改ざんによる“5,000円基準”の不正適用」「営業所等が得たリベート収入の除外」などの不正が起こり得るという会社やその顧問税理士は、社内調査の実施や不正防止ルール作成を検討してみる価値はありそうだ。
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キーワード 「社内調査」⇒14件
(週刊「T&A master」447号(2012.4.16「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2012.6.27 ビジネスメールUP!
1700号より
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