海外子会社合併等の場合の株主課税は
両国の合併等の「本質的要素」同じなら、株式譲渡損益は0の方向
・ 外国子会社が現地法人と合併等する場合、内国法人である親会社の株式譲渡損益課税が問題に。
・ 法人税法上は譲渡損益0も、それには、外国での合併等が法人税法上も合併等と言える必要あり。
・ 課税当局は、日本の会社法上の合併等と本質的要素が同じなら、法人税法上も合併等と取り扱う方向。 |
企業活動のグローバル化に伴い、海外の子会社を現地法人と合併させるといったケースが少なくない。こうしたなか問題となっているのが、内国法人である親会社における株式の譲渡損益課税だ。
内国法人の外国子会社が、外国においてその国の現地法人に吸収合併されるケースを考えてみよう。この場合、合併法人、被合併法人とも外国法人であるため、合併そのものにはその国の税制が適用されることになる。日本の法人税法上の課税関係が問題となるのは、親法人に対する株式譲渡損益である。
法人税法61条の2第2項では、合併があった場合、被合併法人の旧株を保有していた法人については、当該旧株に係る譲渡損益を発生させない旨規定している。例えば親会社をA社、その子会社をB社とし、B社がC社に吸収合併された場合、A社には合併対価としてC社株式が交付されることになるが、同項の規定により、「有価証券(B社株)の譲渡対価=合併直前の簿価」とされ、譲渡損益は発生しないことになる。
ただ、B社・C社ともに外国法人である場合、その合併が日本の法人税法上も「合併」と言えるのかどうかを明らかにする必要がある(例えばイギリスには合併法制が実質的にない)。同様の問題は、会社分割や株式交換など他の組織再編についても言える(法法61条の2C、G)等参照)。
この点、課税当局は、外国における合併等であっても、日本の会社法上の合併等と「本質的な要素」が同じであれば、日本の法人税法上も合併等として取り扱う方向で検討を行っている模様だ。ここでいう「本質的な要素」は、例えば合併であれば、「権利義務の包括承継(=個々の権利義務の移転が不要)」や「資産・負債を移転した会社の自動的な(=清算手続なしでの)解散・消滅」となる。こうした「本質的要素」は合併、会社分割、株式交換等それぞれについて検討されるとともに、本質的要素を主要各国における組織再編行為に照らし、これが同じであると判断されれば、日本の法人税法上も合併等と取り扱うことになる。この結果、英米独仏など主要国の合併等の多くは、日本の法人税法上も合併等と取り扱われることになるものと思われる。
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キーワード 「海外子会社」⇒92件
(週刊「T&A master」453号(2012.6.4「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2012.8.22 ビジネスメールUP!
1720号より
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