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損金経理等は必須、限度額は個々の資産ごとに
最新判決から見る圧縮記帳の注意点

 東京地裁(川神裕裁判長)は5月10日、収用等の圧縮記帳を巡り、複数の取得資産をもって代替資産とした場合の圧縮限度額は“個々の代替資産ごと”に算定すべきであると判断。また、損金経理等のない代替資産の取得価額は、圧縮限度額の算定に係る代替資産の取得価額とはならない旨を判示し、いずれも納税者の主張を斥けている。収用等を巡る圧縮記帳は、適用金額が巨額となるケースも珍しくないだけに、その税務処理には細心の注意を払う必要がある。東京地裁の判断内容(「圧縮限度額は“個々の代替資産ごと”に算定」「収用等の圧縮記帳には損金経理等が要件」)は、収用を伴う圧縮記帳を適用する際の注意点として、押さえておきたいものといえそうだ。

課税当局を全面支持、東京地裁は“個々の代替資産ごと”に算定と判断
 今回の事案は、収用等に伴う圧縮記帳の特例の適用関係が争われていたもの。
 納税者は、収用事業に伴い建物、建物付属設備、土地、機械装置等を国・県に譲渡し、交付を受けた対価補償金(約29.5億円)により、代替資産として、新たに建物、建物付属設備、土地、機械装置等を取得。代替資産に圧縮記帳を適用する際に、個々の代替資産の取得価額を合計したうえ、圧縮限度額を計算し、固定資産圧縮損を約26億円とする確定申告書を提出していた。
 これに対して課税当局は、複数の資産を代替資産として取得した場合の圧縮限度額は、個々の代替資産の取得価額ごとに算定すべきであると指摘。圧縮限度超過額と認定した約2.5億円を損金不算入とする更正処分等を行っていた。
“個々の資産ごと”か“合計額”か
  収用等による圧縮記帳の特例を規定した租税特別措置法64条1項等では、圧縮限度額の算定方法を次のように規定している。

圧縮限度額
   =代替資産の取得価額×差益割合

 今回の事案では、複数の取得資産をもって代替資産とした場合の圧縮限度額の算定に際し、代替資産の取得価額は、@個々の代替資産の取得価額の合計額(納税者主張【図1参照】)とA個々の代替資産ごとの取得価額(課税当局主張【図2参照】)のいずれであるかが主な争点となっていた。

東京地裁、納税者の主張に法的根拠はない
 東京地裁民事第2部の川神裕裁判長は、圧縮限度額の算定方法を定めた租税特別措置法64条1項について、圧縮限度額の計算が代替資産の取得またはその取得に係る代替資産ごとに行われるものであることを前提にしているものであると指摘。圧縮限度額は、その計算の基礎となる個々の代替資産の取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて個別的に計算されるべきものであると解されると判示している。また、川神裁判長は、複数の取得資産をもって代替資産とした場合には、複数の取得資産が全体として1つの「代替資産」として圧縮限度額を算定すべきとした納税者の主張に法的根拠は見当たらないと指摘。国側の主張を全面的に支持する判決を言い渡している。

申告調整だけでは適用不可、収用の圧縮記帳には損金経理等が必要!
 納税者は、今回の訴訟において、複数の取得資産をもって代替資産とした場合には、帳簿価額を損金経理により減額した資産の取得価額だけではなく、帳簿価額を損金経理により減額していない資産の取得価額も、圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額に含まれる旨を主張していた。
 この主張に対して川神裁判長は、措置法64条1項所定の圧縮限度額は、帳簿価額を損金経理により減額した(または積立金として積み立てる方法により経理した)代替資産の取得価額を基礎に計算される旨を指摘。損金経理等のない資産の取得価額は圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額とはならない旨を判示し、納税者の主張を一蹴している。

建物のみ損金経理のケース、建物附属設備までの圧縮記帳は認めず
 今回の事案のほかに、圧縮記帳の適用に関する損金経理要件が争われていた事案として、平成元年6月16日裁決を挙げることができる。この裁決例の納税者は、通常、建物には建物附属設備が含まれており、建物のみの損金経理をもって、建物附属設備について圧縮損の計上が認められるべきである旨を主張。これに対して審判所は、所定の経理処理のない建物附属設備については、たとえ納税者が圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産に含める意思があったとしても、圧縮損計上による損金算入は認められないと結論付けている。

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週刊「T&A master」460号(2012.7.23「SCOPE」より転載)

(分類:税務 2012.10.17 ビジネスメールUP! 1742号より )

 

 
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