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故斉藤了英氏の相続税務訴訟でゴッホの絵画評価額を判断
静岡地裁、子の借金返済のために出した32億円は「贈与」と認定

 

 静岡地裁民事第一部(宮岡章裁判長)は3月30日、旧大昭和製紙(現日本製紙)の故斉藤了英・元名誉会長(以下、「了英氏」)の息子らが、生前の了英氏が息子の株取引などによる債務の弁済に充てるために肩代わりした約32億円は、立替金として交付されたのか、交付時に贈与されたものであったかなどを争う事件に対する判決を下した(平成12年(行ウ)第15号)。
 宮岡裁判長は、「借入金の返済資金として、金員を贈与し、原告らもこれを承諾していたと認めるのが自然かつ相当であり、了英氏が自らの死亡を始期として始期付免除をしたと評価するのは技巧的に過ぎるといわなければならない。」などと判示。32億円は了英氏からの生前贈与であり、贈与税の課税時効が過ぎているから納税の必要はないとする原告側の主張を認めた。
 一方、もう一つの争点でもあった相続財産の一つであるゴッホの絵画の評価額については、「本件絵画の相続開始時における時価は、その取得価格である7500万ドル(79億7652万円)から価額が下落することはなかったと認めるのが相当」などと判示。オークション・ハウスが判定したエスティメート(オークションにおける見積額)が5000万ドル(53億1750万円)であったから相続税法上の評価額も5000万ドルだとした原告の主張を斥けた。

「贈与と認めるのが自然かつ相当」
 生前の了英氏が息子の株取引などによる債務の弁済に充てるために肩代わりした約32億円について、被告である国税側は、「32億円の交付は、贈与ではなく、債務の弁済に充てる立替金の交付であったと評価するのが相当。死亡による返済義務の免除が当初よりなされていたと解されるから、立替金額を死因贈与されたとみなされ、立替金額に対する相続税を納付する義務がある。」と主張していた。
 一方、原告である了英氏の息子らは、「了英氏は、金員の交付の際、それが贈与であることを明言しており、一度も金員の返還を求めたことがない。絵画2点を約264億円で購入したことで税務調査を受けることが予定されていた頃に、あえて、我々に金員を交付した事実を記録化していることからすると、了英氏が贈与税の申告を懈怠しようとはしていなかったことなどから、金員の交付が贈与であることを否定することはできない。」などと反論していた。
 これに対し、宮岡裁判長は、「了英氏にとって、32億円の交付は、単に必要な金員を「出してやれ」という程度のもので、金員の交付の趣旨は明確ではないものの、その後、了英氏から交付した金員の返還請求はない。高額ではあるものの、父から子らに対する金員の交付であって、原告らも交付された金員を返済するだけの資力がなかった。以上の事実関係に照らせば、原告らの借入金の返済資金として、各金員を贈与し、原告らもこれを承諾していたと認めるのが自然かつ相当であり、了英氏が自らの死亡を始期として始期付免除をしたと評価するのは技巧的に過ぎるといわなければならない。贈与税の申告の有無と贈与の有無とは直ちに結びつくものではないから、贈与税の申告あるいはその準備行為をした形跡がないからといって、この事実を過度に重視するのは相当ではない。」などと判断した。

「取得価格から下落することはなかった」
 相続財産の一つであったゴッホの名画「医師ガシェの肖像」の評価額について、宮岡裁判長は、「本件絵画のような書画の時価を評価するにあたっては、売買実例価格、精通者意見価格等を参酌して評価することとされている(財産評価基本通達135(2))」とした上で、平成2年に了英氏がオークションで7500万ドルで取得し、相続により取得した原告らが平成9年に9000万ドルで売却した売買取引実例価額は、本件絵画の相続開始時における時価額を判定する際の重要な資料であるというべきなどと判示。7500万ドルと、9000万ドルという2度の売買取引実例の価格が異常であったことについて裏付けを欠いていると判断した。また、この売買取引実例の価格と大きく異なるエスティメート(オークションにおける見積額)を「時価」とする原告らの主張を「取引の裏付けを伴わない空疎なもの」などと批判している。
 宮岡裁判長は、エスティメートの価格は、「本件絵画のオークションにおける確実に付くであろう最低限の価格、最低売却価格の見積りに過ぎないと解するのが相当」だとし、本件絵画の相続開始時における時価は、その取得価格である7500万ドル(79億7652万円)から価額が下落することはなかったと認定した。

租税法上、訴訟法上の信義則違反か否か
 原告である了英氏の息子らが、国税側が、本件訴訟に至ってから前記ゴッホの名画の価額を変更したことは、「租税法上若しくは訴訟法上の信義則違反である」などと主張していたことについて、宮岡裁判長は、「国税側は、調査経過において、本件絵画を5000万ドルと申告しているのは過少申告である旨の指摘をしていた」とした上で、原告に対する更正処分の際に、本件絵画の価額は変えなかったものの、原告が主張する5000万ドルという絵画の価額を容認する旨の積極的な表明まではしておらず、原告が主張する本件絵画の価額を容認する「公的見解を表示したとは認められない」と認定した。
 また、原告側が、その他の争点での勝ち目が薄くなった国税側が、急遽、ゴッホの名画の価額に関する主張をしたとして、「時機に遅れており、訴訟法上の信義則に違反する」と主張した点について、宮岡裁判長は、国税側の本件絵画の価額に関する主張及びそれに関連する証拠は本件争点整理手続において特別に時期に遅れることなく提出され、原告側は、一応の反論、反証を尽くしたのだから「若干遅きに失した嫌いはあるが、訴訟法上信義則違反として許されないとまでは認められない」と判断した。

 

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週刊「T&A master」110号(2005.4.11「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2005.5.9 ビジネスメールUP! 702号より )

 

 
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