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申告書提出失念ミスによる12億円超の無申告加算税を容認
関西電力(株)の「過重なペナルティ」との主張は受け入れられず

 大阪地裁第2民事部(西川知一郎裁判長)は、9月16日、「関西電力(株)が、税額を法定納期限までに納付していたものの、消費税等の確定申告書の提出を失念していたために、12億円超の無申告加算税賦課決定処分を受けたことに対し、『申告の遅れのみに対して過重なペナルティである』などとして、無申告加算税賦課決定の取消しを求めた」裁判で、「本件に適用された無申告加算税の税率(5%)が原告の期限内の納税申告書の提出義務に比して重きに過ぎるということもできない」などと判示して、関西電力(株)の請求を棄却した。
 関西電力(株)は控訴断念を公表した。

本税の納付は行っていたが
 本件は、関西電力(株)(「原告」)の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの課税期間(「本件課税期間」)の消費税及び地方消費税(「消費税等」)について、原告がその法定申告期限及び法定納期限である同年6月2日までに消費税等として総額247億7850万9700円の納付はしたものの、その申告書の提出をしていなかったとして、所轄税務署長が、同年9月30日付けで、国税通則法66条1項1号及び同条3項に基づいて、納付すべき消費税等の税額に100分の5の割合を乗じて計算した12億3892万5000円の無申告加算税の賦課決定処分(「本件処分」)をしたのに対し、原告が本件処分の取消しを求めた事案である。
 上場企業であれば、確定申告書の提出期限の延長の特例(法法75の2)の申請を行うことで、法人税の確定申告書の提出期限は一月間延長される。消費税法には法人税法75条の2に相当する規定はなく、消費税確定申告書の提出失念ミスは生じやすい。

原告は3争点で主張
 原告は、消費税確定申告書の提出失念ミスを認めているものの、消費税の納付すべき税額の納税も期限内に済ませていることから、12億円超の過少申告加算税の賦課決定は受け入れ難いとして、次の3点で主張した。
(1)原告は法定申告期限及び法定納期限である平成15年6月2日に、本件納付書とともに所定の消費税等の税額を納付したものであり、たとい適式の申告書の提出を欠いていたとしても、実質的には本件納付書が申告書の機能の相当部分をカバーする役割を果たしたと見ることができ、本件納付書の提出をもって税額の確定という申告の法的効果が生じるものとまではいえないものの、これを「瑕疵ある申告」とみなす余地は十分ある。
  さらに、申告書の提出忘れに気付いた原告は、直ちに自発的に期限後申告書を提出したのであるから、実質的にはこれによって申告に関する上記「瑕疵」は治癒されるに至ったといえる。
(2)被告は本件納付を本件課税期間に係る消費税等の予納として扱っている。期限後申告書(本件申告書)の提出によって予納時にさかのぼって本税に充当の取扱いがされているから、無申告加算税算定の基礎となる通則法35条2項の規定により納付すべき税額がゼロであるため、結局原告に無申告加算税は課し得ないことになる。
(3)通則法66条の定める無申告加算税は、行政上の制裁の一種に属するところ、本件は、実質上は同条の保護法益を侵害するものではなく、したがって、実質的違法性を欠くものとして、制裁の対象から除外されるべきことは、制裁法理上当然というべきであり、まさに、同条1項ただし書にいう「正当な理由」に当たるものというべきである。また、行政制裁の一般原則の一つである罪刑均衡の原則に照らしても、本件のように原告に巨額な制裁を課す本件処分は、この罪刑均衡の原則に大きく違背し許されない。

原告の主張は悉く排斥
 西川裁判長は次のように判示して、原告の主張を悉く排斥し、請求を棄却した。
(1)本件納付書の提出及び本件納付をもって「瑕疵ある申告」とみなした上、法定申告期限後に本件申告書が提出されたことをもって上記「瑕疵」が治癒したものと解することは、申告納税方式により納付すべき税額が確定するものとされている国税等の納税手続における納税義務者による法定申告期限内の納税申告書の提出の重要性をないがしろにし、申告納税制度を定めた法の趣旨を没却するものというべきである。
(2)国税の納付義務の確定に関する通則法の規定からすれば、被告による本件納付の上記消費税額への充当は、本件申告書が提出され、本件課税期間に係る消費税等の納付すべき税額が確定した時点において、当該税額の確定した租税債務についてされたものと解するほかなく、また、その充当の効果についても、原告の主張のように、いまだ本件課税期間に係る消費税等の納税申告書の提出もなく、したがってその納付すべき税額も確定していない本件納付時点にさかのぼって、上記消費税等に係る租税債務が消滅したものと解することはできない。
(3)納税申告書の提出を失念し、これを法定申告期限内に提出しなかったこと自体が、申告納税方式による租税の納税手続の根幹を成す納税義務者の重要な義務の不履行といえる。たとい本件課税期間に係る消費税等の全額に相当する金額がその法定納期限までに収納機関に納付(本件納付)されているとしても、原告の上記義務違反が無申告加算税を定めた法の趣旨に照らして、実質的違法性を欠くということは到底できない。本件処分に係る無申告加算税の額は12億3892万5000円であって、高額であることは原告主張のとおりであるが、本件に適用された無申告加算税の税率(100分の5の割合)が原告の上記義務違反に比して重きに過ぎるということもできないから、罪刑均衡の原則ないし比例原則違背等をいう原告の主張も理由がない。



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  キーワード 「無申告加算税
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週刊「T&A master」133号(2005.10.10「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2005.11.7 ビジネスメールUP! 773号より )

 

 
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