|
証券監視委、有価証券報告書の虚偽記載で初の課徴金納付命令勧告
顧客のインサイダー取引絡みで大手証券会社には行政処分勧告
証券取引等監視委員会は11月22日、内閣総理大臣および金融庁長官に対し、東日本ハウスの有価証券報告書虚偽記載について課徴金納付命令の発出を、また、大和証券および同社従業員に顧客企業のインサイダー取引に絡む法令違反があったとして行政処分等の措置を勧告した。課徴金納付命令の勧告は、9月14日付でなされたパオ株券のインサイダー取引をめぐる事案を含めて計11件を数えることとなったが(本誌179号4頁参照)、これまでの10件はいずれもインサイダー取引が対象行為であり、有価証券報告書の虚偽記載に絡んでは初の勧告となっている。
パオ株券の内部者取引で課徴金納付命令
証券監視委は9月14日、株式会社パオの株券に係るインサイダー取引の検査結果により、同社と業務提携契約を締結している株式会社ジー・コミュニケーションの役員が、契約の履行に関して、パオが決定した株式発行の事実を知り、その事実の公表される今年1月6日以前である平成17年11月7日、ジー社の計算において株券8,000株を316万円で買い付けたとし、課徴金納付命令の発出を勧告した。
買付けが行われた場合の課徴金額の算定は、「(重要事実が公表された翌日の終値×買付株数)−(買付価格×買付株数)」とされており、本件では「444円×8,000株−395円×8,000株」の計算により、課徴金額は39万円であるとされた(1万円未満は切捨て)。
金融庁は10月2日、証券監視委からの勧告を受け9月14日に審判手続開始決定を行ったところ、被審人から事実・課徴金額を認める旨の答弁書の提出があったことから、課徴金額を39万円、その納付期限を今年12月4日とする決定を行っている。
この事件が、課徴金納付命令を勧告するものとしては10件目となっていた。
虚偽有価証券報告書提出では初の課徴金納付命令の勧告
証券監視委は11月22日、東日本ハウス株式会社に係る有価証券報告書虚偽記載の検査結果により、同社が今年1月27日、関東財務局長に対し、@平成17年10月期において連結純資産が約34億円であったにもかかわらず連結純資産に相当する「資本合計」欄に約38億円と記載するなどした連結貸借対照表、A経常利益が約15億円であったにもかかわらず約22億円と記載するなどした連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出したとして、課徴金納付命令の発出を勧告した。
退職給付引当金の過少計上によるものであるが、「重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書等……を提出した」(証券取引法172条の2第1項)行為と認められるとされ、課徴金額200万円の算定が行われている。
現行証取法172条の2第1項は、虚偽有価証券報告書等の提出に係る課徴金額を、「300万円」または「株式の市場価格の総額等の0.003%」のいずれか大きい額と定めているが、平成17年12月1日に施行された平成17年6月29日法律第76号の附則5条により、「施行日から起算して1年を経過する日までの間」の一定の対象者については、「200万円」または「総額等の0.002%」のいずれか大きい額とされているため、上記のとおり算定されている。
東日本ハウスは11月22日、本件とは別に5月8日の取締役会で「内部統制基準」の基本方針を決議しているところ、財務報告に係る内部統制およびコンプライアンスの徹底に向けた再発防止策・社内管理体制の強化策について、今回の調査での指摘や外部専門家の意見を踏まえ、引き続き鋭意策定していくとコメントした。
顧客の内部者取引に絡む行政処分勧告
また、証券監視委は11月22日、大和証券株式会社の検査結果により、同社および同社従業員に、
@ 内部者取引のおそれのあることを知りながら顧客の有価証券の売買の受託をする行為(証券会社の行為規制等に関する内閣府令4条8号)
A 顧客の有価証券の売買に関する管理の状況が法人関係情報に係る不公正な取引の防止上十分でないと認められる状況(行為規制府令10条4号)
B 本人確認法上の本人確認を行わないまま、顧客の有価証券の売買の注文を受託する行為(本人確認法3条1項)
に該当する法令違反の事実があったとし、行政処分その他の適切な措置を講ずるよう勧告している。
事案は、同社姫路支店投資銀行業務担当課長代理が、その業務に関し、顧客であるフジプレアムとフジプレアム役員により行われたフジプレアム株式に係るインサイダー取引のうち(同事件については、本誌179号6頁参照)、役員による平成17年10月4日・6日の他社名義口座での計2回、1,500株の買付注文について、「他社名義口座開設の経緯等から、同口座がフジプレアム役員の借名口座ではないかとの疑念を抱いていたこと」「当該買付注文受注時点において、フジプレアムに株式分割を行うという公表されていない重要事実が存在することを認識していたこと」「当該買付注文が、フジプレアム役員の指示によるものではないかとの疑いを持っており、かつ、同社の他の役員により発注されたものであったこと」から、インサイダー取引のおそれを認識していたにもかかわらず、委託注文書を徴求するなどの必要な対応をとることなく注文を受託していたとされる(@)ほか、前任および後任の支店長がインサイダー取引を防止するための十分な対策を講じないまま業務を行うなどAを作出し、さらに、課長代理が前述の懸念を抱きながらもBを行ったとするものである。
大和証券では11月22日、「この度の指摘につきまして厳粛に受け止め、今後さらなる内部管理体制の強化に取組み、再発防止に努めて参る所存です」と発表している。
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster 読者限定サイト 検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「インサイダー」⇒28件
(週刊「T&A master」189号(2006.12.4「今週のニュース」より転載)
(分類:会社法等 2007.1.10 ビジネスメールUP!
936号より
)
|