エントランス回線1回線に係る権利1つで収益の獲得に寄与するもの
NTTドコモ訴訟、上告審でも「少額減価償却資産」に該当
最高裁判所第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は9月16日、PHS事業のエントランス回線利用権が少額減価償却資産(取得価額が10万円未満であるもの)に当たるかどうかが争われている事案について、「本件権利については、エントランス回線1回線に係る権利一つをもって、一つの減価償却資産とみるのが相当である」などと判示して、課税庁の上告を棄却する判決を言い渡した。
事案の概要
本件は、被上告人の平成10年4月1日から同13年3月31日までの3事業年度の法人税に関し、その減価償却資産である電気通信施設利用権に当たるエントランス回線利用権が法人税法施行令133条所定のいわゆる少額減価償却資産(取得価額が10万円未満であるもの)に当たるかどうかが争われている事案である。
第一審、控訴審ともに、「エントランス回線も1回線ごとに法人税法施行令133条の取得価額を判定するのが相当」などと判示しており、控訴審の判断に不服として、課税庁が上告受理申立てを行ったものである。
上告審の判断
藤田裁判長は事実関係から、「エントランス回線利用権は、エントランス回線1回線に係る権利1つを1単位として取引されているということができる。」「減価償却資産は法人の事業に供され,その用途に応じた本来の機能を発揮することによって収益の獲得に寄与するものと解される。」としたうえで、「エントランス回線が1回線あれば、当該基地局のエリア内のPHS端末からB社の固定電話又は携帯電話への通話等、固定電話又は携帯電話から当該エリア内のPHS端末への通話等が可能であるというのであるから、本件権利は、エントランス回線1回線に係る権利一つでもって、被上告人のPHS事業において、上記の機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものということができる。」と判示した。さらに、「そうすると、本件権利については、エントランス回線1回線に係る権利一つをもって、一つの減価償却資産とみるのが相当であるから、法人税法施行令133条の適用に当たっては、上記の権利一つごとに取得価額が10万円未満のものであるかどうかを判断すべきである。前記事実関係によれば、被上告人は、本件権利をエントランス回線1回線に係る権利一つにつき7万2800円の価格で取得したというのであるから、本件権利は、その一つ一つが同条所定の少額減価償却資産に当たるというべきである。これと同旨の判断は正当として是認することができる。」と判示して、原審の判断を認容し、本件上告を棄却した。
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(週刊「T&A master」275号(2008.9.22「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2008.11.5 ビジネスメールUP!
1191号より
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