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22年度改正での封込めを視野にみなし配当活用の節税策に駆込みも
買収相手によっては、租税回避行為認定のリスク高まる恐れ
長年課税当局を悩ませてきた、親会社が保有する子会社の株式を当該子会社に買い取らせることで、受取配当等の益金不算入規定を活用しつつ、株式譲渡損失のみを実現させるという節税スキームを封じ込めるための法改正が検討されているが、政府側のこのような動きを受け、税制改正前にこの節税スキームを利用しようという動きが一部にあるようだ。
ただ、買収先に休眠会社を選ぶケースもある模様で、このような場合、一連の株式売買行為に経済合理性が認められないとして、行為計算が否認される可能性も完全には否定できないと思われるだけに、慎重な対応が必要だろう。
法改正の動きが「行為計算否認なし」との確信につながるという皮肉?
親会社が保有する子会社の株式を当該子会社に買い取らせることにより、受取配当等の益金不算入規定を活用しつつ、株式譲渡損失のみを実現させるという節税スキームに対し、政府は、@そのグループ子法人株式の譲渡損益を計上しないこと、およびA自己株式として取得されることを予定して取得した株式については、みなし配当に係る益金不算入を認めないとする税制改正を検討している(本誌322号参照)。
このようななか、同案が平成22年度税制改正で実現することを前提に、駆込みでこの節税スキームの利用を図る動きがあるようだ。
この節税スキームを巡っては、課税当局において行為計算否認も検討されたものと思われるが、たとえば、「株の取得が思うように進まず、100%子会社化を断念せざるをえなかった」ことを子会社に株式を買戻しさせた理由とされた場合にまで、租税回避の意図を立証することは困難であると考えられることから、これまでのところ否認は行われてこなかったものと推測される。さらに、現在、政府が法改正によりこの節税スキームの封込めを検討していること自体、租税回避の認定が困難であることを示唆しているともいえよう。節税スキームの“駆込み”利用の背景には、このような事情もあるものと思われる。
本誌取材によると、節税スキームの活用を狙ったものではないことを装うために、休眠会社の株式を一定期間保有するスキームを描くケースもある模様。そして、この「一定期間」を少しでも長く確保したいとの思惑が、“駆込み”とも思われる早期買収につながっているようだ。
ただ、買収した会社が休眠会社となると、一連の株式の売買行為に経済合理性がないと判断され、租税回避の認定を受ける可能性も完全には否定できないと思われるだけに、慎重な対応が必要であろう。
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キーワード 「平成22年度税制改正」⇒82件
(週刊「T&A master」325号(2009.10.12「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2009.12.11 ビジネスメールUP!
1344号より
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