未公開 裁決事例紹介
低額譲受けの土地の時価を取引事例・公示地から算定
原処分庁による通知処分を一部取消し
○審査請求人が親族から「著しく低い価額の対価」で譲り受けた土地について、審判所が当該土地に関して類似する取引事例および公示地の価格から時価を算定した事例(熊裁(諸)平20第25号)
基礎事実等
請求人は平成18年5月8日、X(親族)との間で、土地435.37u(以下「本件土地」という)を譲り受ける旨の売買契約を締結し、同月25日に売買代金として○○円をXに支払った。なお、本件土地については、平成18年5月8日に売買を原因とする所有権移転登記を経由している。
本件土地の面する路線に付された平成18年分の路線価(以下「本件土地の路線価」という)は、46,000円である。
請求人は、平成18年分の贈与税について、法定申告期限までに申告書を提出しなかった。原処分庁所属の調査担当職員は調査において、請求人がXから本件土地を取得したことについては、相続税法7条に規定する著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合に該当する旨を指摘。請求人は、指摘を受け、その取得の時に、当該売買代金と本件土地の時価との差額に相当する金額をXから贈与により取得したとして、平成19年11月に申告書を提出した。
原処分庁は、これに対して、無申告加算税の賦課決定処分をした。
その後、請求人は、平成19年12月に課税価格および納付税額を減額すべき旨の更正の請求をしたが、原処分庁は、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という)をした。
争点および主張
争点は、請求人が取得した本件土地の時価について。争点における請求人および原処分庁の主な主張は、次頁表のとおり。
審判所の判断
(1)請求人が主張する本件土地の時価について
請求人の主張する本件土地の平成18年分の路線価相当額46,000円は、本件土地の路線価46,000円と同額であり、請求人が主張する本件土地の平成18年分の路線価相当額を基に算定する方法は、本件土地の路線価を基に算定する方法と何ら変わらないことは明らかである。
そうすると、路線価は、評価基本通達13《路線価方式》に定める路線価方式による評価の基になる価額であり、対価を伴う取引により取得した土地の価額については、路線価方式に基づく相続税評価額にかかわらず、通常の取引価額に相当する金額、すなわち客観的な交換価値によって評価することが相当であることから、請求人が主張する時価(1,253万1,274円)は、本件土地の適正な時価を表しているとは認められない。
(2)原処分庁が主張する本件土地の時価について
原処分庁は、@本件土地の近隣には、比準すべき取引事例が存在しているにもかかわらず、これらの取引事例を比準していないこと、A公示価格および基準地の標準価格をもって本件土地の時価の算定の基礎としていること、およびB個別的要因の格差補正を行っているが、格差率の適用根拠は不明確であることから、原処分庁が主張する本件土地の時価(1,763万2,485円)は、適正な時価を表しているとは認められない。
(3)当審判所が算定した本件土地の時価について
土地の時価(客観的な交換価値)を認定する方法としては、不動産鑑定士による鑑定評価に基づく鑑定評価額のほか、評価対象地に関して、時間的・場所的・物件的および用途的同一性等の点で可能な限り類似する取引事例に依拠し、それを比準して価格を算定する取引事例比較法があり、取引事例比較法は、市場性を反映した価格が算定されていることから合理性があり、また、相当な方法であると解される。
公示価格・標準価格および相続税法22条に規定する時価は、いずれも自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格、すなわち客観的な交換価値をいうものと解することができ、評価対象地の近隣に公示地(地価公示法6条の規定により公示された標準地)がある場合、それを選択することは、合理性があると解される。
そこで、本件土地の存する地域(近隣地域)に存し、本件土地と地積、形状等の画地条件の格差が最小限となるような取引事例(譲渡人と譲受人との間に縁故関係がある等の特殊事情が認められない取引事例を採用)および公示地を調査し、当審判所においても相当と認められる基準である土地価格比準表に準じて、時点修正・事情補正および格差補正などを行って、請求人が本件土地を譲り受けたと認められる平成18年5月8日における本件土地の時価を算定すると、1,634万7,708円となる。
そうすると、請求人の平成18年分の贈与税に係る課税価格は、譲受けの対価と本件時価との差額になるから、本件通知処分は違法なものであり、その一部を取り消すべきである。
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(週刊「T&A master」327号(2009.10.26「未公開 裁決事例紹介」より転載)
(分類:税務 2010.1.8 ビジネスメールUP!
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