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更生手続前の入会金、新ゴルフ会員権の取得費算入を認める
ゴルフ会員権の取得費を巡り、東京地裁が注目判決
株主会員制ゴルフ会員権の取得費を巡り、更生手続前に支払った入会金等が、更生計画に基づき発行された新株式および新ゴルフ会員権(プレー権)の譲渡時に、取得費として認められるか否かが争われていた事案で、東京地裁は平成23年12月13日、プレー権については、更生手続前後で資産の同一性を有していることを認め、更生手続前に支払った入会金を取得費として認めるという注目すべき判断を示した。
株主会員制ゴルフ会員権を巡る税務は、判例や裁決例などがほとんどないだけに今後の実務の参考になる判決と言える。なお、本事案は納税者・国の双方が控訴しているため、今後の行方も注目される。
課税当局、更生手続前後の取得費承継を認めず
更生手続により旧株式は全額無償消却
今回紹介する事案では、株主会員制ゴルフ会員権(今号42頁参照)の取得費の取扱いが争われていた。
本事案の納税者(原告)は、昭和61年に入会金380万円および預託金1,520万円を支払い預託金制ゴルフ会員権を取得し、平成11年に預託金会員から株主会員に転換していた。株式への転換に際しては、預託保証金1,520万円のうち、600万円を旧株式に充当する一方、残額の920万円は払戻しを受けていた。その後、平成13年にゴルフ場経営会社は会社更生手続を開始。更生計画では、旧株式が100%無償消却される一方で、優先的施設利用権(プレー権)は存続される旨が明記されていた。
納税者は、平成14年に株式消却にともない割り当てられていた新株引受権を行使。28万円を払い込むことによって、ゴルフ場経営会社の新株式を取得していた。また同年、旧会員証(旧プレー権)と引き換えに新会員証(新プレー権)を取得していた。
新プレー権と新株式を一括して譲渡
納税者は、平成17年に新プレー権を新株式と一括して「ゴルフ会員権」として125万円で譲渡。その申告に当たり、総合課税の譲渡所得として、譲渡価額を125万円、取得費を980万円(入会金380万円+旧株式の取得費600万円)とする申告を行っていた。
これに対して原処分庁は、新プレー権と新株式は別個の資産であるとの前提のもと、新プレー権の譲渡は総合課税、新株式の譲渡は分離課税としたうえで、新プレー権の取得費をその取得時期の時価である177万5,000円とし、新株式の取得費を払込み額である28万円とする更正処分等を行っていた。
更生手続前後のゴルフ会員権の同一性の有無が争点に
本事案の争点は、@更生手続前後におけるゴルフ会員権の同一性の有無、A@の点を踏まえたゴルフ会員権および新株式の譲渡に係る所得区分とその収入金額および取得費の額であった。なお、主要な争点である@更生手続前後におけるゴルフ会員権の同一性の有無に関する納税者・国側双方の主張は表1のとおりである。
【表1】更生手続前後におけるゴルフ会員権の同一性の有無を巡る当事者の主張
納税者側の主張 |
国側の主張 |
@更生計画は、プレー権の存続を明記していたこと、A納税者が新株引受権を行使して旧株式の消却後も新株式を所有しており、プレー権とゴルフ場経営会社の株式を保有するというゴルフ会員権の権利内容に変更がないこと、B株式取扱規程ではプレー権と株式の一体性を認めていることなどが明らかであることに照らすと、更生手続の終結時においても、納税者は新プレー権(旧プレー権と同一性を有する)と新株式が一体となったゴルフ会員権を継続して保有していた。
したがって、ゴルフ会員権は、更生手続前の性質(旧プレー権および旧株式の関係)と同一性を有するというべきである。 |
譲渡所得の計算にあたっては、所得税法33条3項が譲渡所得の総収入金額から当該所得の「基因となった資産」の取得費を控除することができる旨を規定している以上、譲渡した資産と同一性が認められない資産の取得に要した金額を取得費として控除することはできないと解すべきである。
ゴルフ会員権は、新プレー権および新株式であり、株主会員制ゴルフ会員権としての旧プレー権および旧株式とは全く異なる別個の資産であるから、譲渡所得の金額の計算上、旧プレー権および旧株式が一体となったゴルフ会員権の取得費や旧プレー権の取得費を控除することはできない。 |
東京地裁、プレー権のみ更生手続前後の同一性を認める
更生計画でもプレー権の存続が明記
東京地裁民事第2部の川神裕裁判長は、更生手続前後におけるゴルフ会員権の同一性について、ゴルフ場経営会社の株式権に関する部分は、旧株式が一旦消却され、新たに付与された新株引受権の行使により新株式を取得したという点で同一性が失われたということができることを指摘。その一方で、株主権以外の債権的契約関係(主にプレー権)は、その基本的な部分である優先的施設利用権(プレー権)および年会費等納入義務に変更がない以上、その債権的契約関係(主にプレー権)は、なお従来の法律関係が維持されているものと認めるべきであるとした。
また、更生計画では、管財人が、プレー権を一体の権利として包含すると考えられる株式について株式消却を行うとしつつ、プレー権については、そのまま存続させることとしていたことを指摘。そのうえで、本件譲渡に係るゴルフ会員権のうち、ゴルフ場経営会社の株主権以外のプレー権は、納税者が平成11年に取得したゴルフ会員権中のそれとの間で、なお資産としての同一性を認めるのが相当であると結論付けている。
新株式は分離課税の対象
川神裁判長は、本件譲渡に係るゴルフ会員権の所得区分について、新株式の譲渡は株式の保有がゴルフ場施設の優先的利用権(プレー権)を有するための要件とされているとまではいえないことを指摘し、他の所得との損益通算ができない分離課税の対象になるとの判断を示した。一方で、ゴルフ会員権(新プレー権)の譲渡は損益通算が可能な総合課税の対象であるとの判断を示し、新プレー権を新株式と一括して総合課税の対象とすべきとした納税者の主張を退けている。
入会金380万円がプレー権の取得費
また、川神裁判長は、ゴルフ会員権(新プレー権)と新株式を別個の資産としたうえで、それぞれの取得費についても具体的な判断を示している。
納税者は、旧株式と旧プレー権が一体となったゴルフ会員権の取得に980万円要したことから、取得費は980万円である旨を主張していた。しかし、川神裁判長は、新株式が旧株式と法律上の同一性を有しないものとして取得されたこと、新株引受権が付与された当時、ゴルフ場経営会社は債務超過状態であったため、その価値がゼロであったことなどを指摘し、旧株式に相当する600万円を新株式の取得費として承継させることはできないというべきであるとし、納税者の主張を退けている。
一方で、ゴルフ会員権(新プレー権)の取得費については、更生手続後もプレー権は従前どおり維持されていたことなどを踏まえ、入会金相当額の380万円のみが取得費に該当すると判断(表2参照)。納税者の主張が一部認められたかたちとなっている。
【表2】所得区分と取得費についての川神裕裁判長の判断内容
所得区分について |
新株式:分離課税の株式等の譲渡所得に該当
ゴルフ会員権(新プレー権):総合課税の長期譲渡所得に該当 |
取得費について |
新株式:28万円(新株引受権の行使価格)
ゴルフ会員権(新プレー権):380万円(昭和61年にゴルフ会員権取得のために支払った1,900万円から株主会員への転換にあたり相殺した預託金600万円と払戻しを受けた残余の預託金920万円を差し引いた金額) |

所得税法69条1項では、生活に通常必要でない資産の譲渡損失を損益通算の対象外としており、同法施行令178条1項では、生活に通常必要でない資産として30万円超の貴金属や骨董品などが列挙される一方、ゴルフ会員権は明記されていない。したがって、現行所得税法上、ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算は認められることとなる。
なお、政府税制調査会が平成17年に公表した「個人所得課税に関す論点整理」では、ゴルフ会員権の譲渡所得を従来の総合課税から他の所得との損益通算ができない分離課税に改める方向性が示されていたが、平成24年度税制改正大綱に至るまで、ゴルフ会員権の損益通算を廃止する旨は明記されていない。 |
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(週刊「T&A master」439号(2012.2.20「第2特集」より転載)
(分類:税務 2012.4.27 ビジネスメールUP!
1677号より
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